いらないものを、僕にくれる兄

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「歩!いい加減にしなさい!!」 怒る母の声と、歩の笑い声。 僕は不思議とこの時、心が無になったのを覚えている。 母の声に振り向きもせずに2回の自室に向かう歩は、再び「いらねえ」と呟いていた。 僕は床にばら撒かれた賞状を見ていた。 僕が、初めて認められた特技。 歩の言う通り、歩が獲ってきた賞に比べたら、この賞は小規模なのかもしれない。 歩からしたら、いらない賞状なのかもしれない。 だけど…… 舞香と母を笑顔にできた、僕の数少ない功績だった。 それがこんな粒になって消えていくなんて… 気がついたら涙の粒を流していた僕は、母に頭を撫でられていた。 「裕樹……そこまで細かくなってはいないから、テープで綺麗にくっつけよう」 僕は優しい母の声に、ただ頷くことしかできなかった。
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