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「好きです」
知ってる、ありがとう、以外の台詞が聞きたくて何度も伝えてきた言葉だ。
同級生なのに大人っぽい彼は成績も良くて性格もいい。バイト先の喫茶店で会った理想の男子、澄人くん。しかし現実は甘くない。
「ありがとう」
にこやかに返された彼からのひと言に身体をくねらせて悶える。
「なんっで! いいじゃない! こんなに好きなのに?!」
はいはい、と頭を撫でられる。それだけで私の心臓は飛び出しそうになる。
「またやってるよ」「飽きないね」と他の従業員が失笑した。バイトの始めと終わりに毎回同じやりとりを繰り返しているせいで余計に重みがなくなってしまった。でも顔を見たら言いたくなってしまう、はっきり断らない彼も悪いのだ。高校一年の秋から高校三年になる春休みまで、一年半もやっていれば習慣になっていた。
「今日もだめなの?」
「春子さあん」
大学生の春子さんに泣きつくとわざとらしく肩をさすって慰められる。
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