ドキドキ記念日

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 驚いて瞬きで涙を散らすとそこには彼がいた。 「送る」 「え、でも……」  送る、と言って彼はきかなかった。落ち込んでいる元凶に来られちゃどうにもならない。「やだ」と口をついて出てしまった。彼は、澄人くんは目を丸くしていた。 「もうやだ、澄人くんいじわるだから」  ああ、イヤな女の子。想いが通じないからって悪気のない人に嫌味を言うなんて。 「確かにそうだね」  ほら……ん? 「たしかにって?」  澄人くんは隣の車止めに同じ向きで寄りかかった。 「初めて会ったときかなり賑やかな子だと思った。俺とは違って、明るくて」 「まあ、うるさいのは自分でもわかってるけど」 「急に会う度、好きって言われるようになって。これは何か試されてるなって」  試されてるとは、どういうことだろう。 「デートに誘われたときも、イメチェンして感想を聞かれたときも何が目的なのか全く想像できなくて上手く返せなかった」  意味がわからない。澄人くんもしかして。 「今日もずっと悩んでた。どうネタばらしされるんだろうって」  本当に何も伝わってなかった? 「はは、まじか」  最後に追いかけてきて、てっきりいい答えが聞けるのかとドキドキしたのに。最悪だ。 「もういいよ、からかってごめんね」  ごめんなさい、と微笑んで涙がこぼれる前に背中を向けた。無理だ。何も伝わってなかったなんて。仕方ないか。走ろうと踏み込んだとき、肩を掴まれた。澄人くんが珍しく眉をひそめている。 「……なに?」 「ごめん!」
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