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 あれこれ色々想いを巡らせ、ロサンゼルスから十二時間のフライトを経て帰国するだろう恋人のために、とりあえず風呂を沸かし、簡単に食べられる軽食を作り始める。  図々しすぎるかな、と思ったけれど翔琉のために、何かせずにはいられなかった。  メッセージが送られてきた時刻からして、今夜の帰国であるとすれば、最終便に乗ったと考えるのが妥当だろう。  恋人が何時に日本へ到着するのか、携帯の経路検索アプリで思いつく限りの予測経路を何度も何度も調べていた。  存外、ストーカーみたいだなと苦笑する。  そもそも「これから会いにいく」とあっても、今日中の帰国とは限らない。  何ひとつ、具体的なことが書かれていないメッセージに不安を覚えつつも、でもやっぱり今日帰国の内に帰国するだろうと思うのは、愛の、力……?    なんて思い込むほど、颯斗の頭はおめでたくはない。  ただの勘だ、勘。  仮に、今日中に帰国していたとしても、もしかしたら機内食で済ませている可能性もある。羽田から六本木へ帰る道中で寄り道して食べてくる可能性だってあるので、あれこれと想像を働かせるしかない。  ハリウッドで活躍するほどの超人気俳優には敏腕マネージャーがついているので、颯斗の出る幕なんてないのだ。  それでも恋人となって四年目を迎えた龍ヶ崎翔琉を信じ、出迎える準備を続ける。  自分が翔琉にそうしたいのだから、結果どうあれ別にいいじゃないか、と言い聞かせて。  「お風呂が沸きました」とアナウンスが流れた直後、玄関のドアの開く音が聴こえる。  包丁を握る手を止め、気づけば足はドアへ向かっていた。 「あ……」  颯斗が息を呑むと同時に、綺麗なグレーの瞳と視線が合致する。  まるで金縛りに合ったように、息すらできず、その場で立ち尽くしてしまう。 「──ただいま、颯斗」  穏やかに微笑む翔琉は疲れた顔したどころか、離れ離れとなった三か月前と何ら変わりはないどころか、より男をあげて颯斗の目の前へ現れた。
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