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生の龍ヶ崎翔琉は本当に危険だ。
そもそもこの人、ハリウッド映画にオファーされた人気俳優なんですよ?
ご存じですか?
去年、この御方は大河ドラマで主役を張ってたんですよ。
そういえばあの時も翔琉とは撮影のために遠距離恋愛でしたね、と颯斗は心の内で苦笑する。
でもあの頃はまだ国内で、翔琉もちょくちょく逢いに来てくれたため、遠距離恋愛をそこまで感じずに済んでいたのだ。
だから三ヵ月もまるまる逢わずにいるなんて、付き合う以前を含まなければ本当に初めてである。
そのせいで今、完全に颯斗は「龍ヶ崎翔琉免疫不全症候群」に陥ってしまっているのかもしれない。
どうしよう……。
颯斗の心臓は大きなどきっから、今度はどっどっどっどっと、より早くビートを刻み始める。
「三ヵ月合わない間に、すっかりまた人見知りの颯斗クンになったのか?」
翔琉は拗ねた口調で告げると、背後からそのまま颯斗を横抱きする。
逞しい腕の中で見つめ合う形となり、いよいよ心臓が止まりそうだった。
高級レストランだってまずは前菜からだろう、と訳のわからないことを颯斗は独り心の中でごちる。
続けて、落ち着け落ち着けと暗示をかけるように心の中で唱えた。
「……淋しいものだな。逢いたかったのは俺だけだったのか?」
悲しそうに颯斗の顔を見おろす視線にはっとしつつも、照れくささを誤魔化すためについ翔琉の腕の中で叫んでしまう。
「違います。とりあえずこのご時世ですし、先に手洗いうがいですってば!」
「なるほど。さっそくキスのお許しが出たってことか。だったら……」
リビングへ向いていた足が、すぐさまサニタリールームへ方向転換する。
洗面スペースへ到着しても尚、背後から颯斗を抱き締め密着したままだ。
本当に、全身で颯斗を補充しているように見えなくもない。
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