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行列の後ろをくぐり抜けながら、いちばん人が並んでいない場所を選ぶ。背負っていた真新しいビビッドイエローなリュックを肩から下ろして一息つこう――――
「おはよう」
「ん?」
――としたところで、後ろから妙に余所行き感を上塗りしただけのような、緊張感とは縁もゆかりも無いような、ある意味お気楽さを伴った声がかけられた。
振り向くと、そこに居たのは3月までの同級生であり――この4月からも幸か不幸かまた同級生になる男子だった。
その姿を見なかったのは新学期までの数日間くらい。その姿はとくに変わったところはない。強いてあげれば学ランのボタンと、詰め襟の学生証が中学時代のモノとは違っていることくらいだろう。
「……ん? 誰よアンタ」
ただ、何となく覚えた違和感は、棘の有る言葉を放出した。
「さすがにそれは言い過ぎだろ」
そう言って彼は笑う。あまりにも自然な流れで、そのままあたしの横に並んだ。そちらを向けば再び視線が交わる。
向けられている妙に生暖かい微笑みは、さすがに彼のキャラじゃないような気がした。
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