sunny after rain

1/5
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

sunny after rain

しとしと‥‥ 僕は決まって小雨が降る日に、此処を訪れる。 雨の鎌倉は風情があって、僕の鬱屈した心を洗い流し穏やかにしてくれる。 「いらっしゃいませー。あ、そろそろいらっしゃるかと思って、いつものお席ご用意していますよ。」 すっかり顔馴染みになった僕を、オーナーさんはいつも優しく迎えてくれる。 「cafe sunny after rain」 店内に入ってすぐ左に、隠れ家の様な一角があり、二人席のテーブルが二脚。 僕はいつも窓側の席だ。 出窓に置かれたフラワーベースには、白いアンスリウム。 前回は確か‥‥ピンク色だった。 オーナーの許可を得て、毎回この窓際のアンスリウムを写真に収めている。 スマホのアルバムには、アンスリウムの写真ばかりだ。 「晴れている日はもっと鮮やかな花を挿しているんですけどね。お客様がご来店の日はいつもアンスリウムで、変わり映えしないですよねぇ。」 すまなそうに苦笑するオーナーだが、僕はこのアンスリウムがとても好きだ。 「アンスリウムは直射日光が苦手ですもんね。僕と同じです。」 気を遣って、そう言ったわけじゃない。 僕は、晴れている日には外出をしない。 29歳、独身。クリエーター。 仕事場は自宅。 こんな僕でも、小さな会社の社長だ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!