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「お客様のお犬様でございましたか、先ほど申し上げたように恐ろしい熊かと見違えましたもので、、申し訳ございません。」
老婆は客の尨犬を食べた事に頭を下げた。
「いいよ、いいよ、それよりどうだい俺の犬は旨えだろ。婆さんよ、独り占めしねえで俺にも分けてくれよ。」
「左様でございますか。へへヘっ」
老婆は不気味に笑った。
客の男は尨犬に突き立てられた包丁を抜き、残った右の前脚を切り取ると、トウモロコシをかじるようにそれにシャブリついた。
「旨えな、俺の犬は。婆さんの作った団子に引けを取らねえよ。うめえ、うめえ。イヒヒヒっ。」
「美味しゅうございますな。へへヘっ。」
「イヒヒヒっ。」
「へへヘへっ。」
「イヒヒヒっ。」
若い男は、老婆と客の異様な様子に気圧され身動きが取れずに立ちすくんでいた。二人の笑い声を聞いていたが、やがて一言つぶやいた。
「全く、可笑しくねえよ。」
〜終わり〜
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