ある山奥の茶店の話

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「お客様、外で犬の声がしましたが、お客様のお連れのお犬の鳴き声でございましょうか。」 「おう、そうだ。いけねえか。」 「いけなくは御座いませんが。音にはお気を付けくださいまし。この辺りは時々熊も出ますで。」 「おおそうか、熊といえばこれか。」 客は『ピー』っと指笛を吹いた。 すると、大きな茶毛の尨犬(むくいぬ)が、五尺はあろうかという熊の亡骸をくわえ、重々しく引きずりながら店の前へ姿を見せた。 「お客様これは。」 老婆は唖然としたように尋ねた。
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