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「なあに、犬の鳴き声がしただろ。この熊はその時、俺の犬が退治したのよ。この熊の毛皮でもって婆さんにも、俺の着ているこれと同じような羽織りを作ってやろうか。」
客は尨犬が引きずって来た熊の亡骸を指差し得意げに言った。
「なんと、お可哀そうに。ナマンダブ、ナマンダブ…」
「なんだよ、熊にお経を上げちゃあしょうがねえよ。おい、婆さんさっき奥で包丁を砥いでたろ。この熊やるから捌いてくれねえか。」
「また、悪い御冗談を。お団子がもうすぐ焼き上がりますので、失礼を。へへへっ。」
「イヒヒヒっ、まあ、いいよ、団子頼むぜ。」
老婆は客の声に反応するでもなく、不気味に笑いながら店の奥へ入って行った。
シャリ シャリ シャリ
また、
刃物を研ぐような音が聞こえ しばらくして老婆が縁の欠けた皿に4本の団子をのせて持ってきた。
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