待ち合わせ

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「ねぇねぇ郁ちゃん！聞いたー？来週から携帯禁止だってぇ。政治家の人たちってホント変なことばっかり思いつくよね」

「未成年携帯使用禁止なんとか……だっけ。ふうちゃん、せっかくゲットしたのにね。ありえないよね」

「やっと買ってもらえた」とつい先日喜んでいた隣席の風子は、机に突っ伏しながら携帯電話を指で突いている。きっと、今日は全国各地の学校中がこの話題で持ち切りになっているだろう。

　昨日晩御飯を食べながら歌番組を見ていると、突然嫌な予感を抱かせるような速報が鳴った。まさにその予感は的中。好きなアーティストがやっと歌唱するという絶妙なタイミングで、画面は総理官邸からの中継に切り替わった。

「えー、未成年者携帯電話使用禁止法の成立に向け、急遽４月１５日より試験的に国民の……未成年者の皆様方にご協力頂きたく存じます」

　番組を中断された恨みが強く、この言葉を聞いた時は特に何も思わなかった。しかし、「郁、携帯デビューしたばっかりなのに残念だね」と呟いた姉の言葉を聞いてはっと息を呑んだ。

　近年、携帯電話の過剰利用が問題視されていることはニュースでも見たことがある。学力及び集中力低下、SNSを起因とするうつ病の発症、いじめや自殺など痛ましい事件の増加――これら数々ある問題の対策として、未成年者に限り試験的に携帯電話の使用を禁止するらしい。