やっかいな弟

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やっかいな弟

 弟の奇行に悩まされたのは高2の夏頃からだ。 ハードな部活を経て帰宅した私が、力尽きて床に転がっていると、プロレスごっこが始まるという謎の習慣ができてしまった。  最初は単に起き上がらせる為の作戦だったようで、私がすぐに立ち上がるとプロレスは終了し、晩ごはんの準備に取り掛かるのだが、ある日を境に【早く起き上がらないとキスされる】という新ルールに変わっていた。 もちろん私は『なにするのやめてよ!』の同義語である『何さらしとんじゃワレ!』と、叫んで激しく抵抗した。 一方弟は悪びれる様子もなく『嫌ならとっとと起きろよ』と言って、普通に晩ごはんの盛り付けに勤しむのだから理解不能だ。  (いぶか)しく思いながらも、多忙な母に代わって家事を担う弟に強く出れず、キスは嫌がらせの一種だと受け止めてやり過ごした。  しかし起き上がらせる為の嫌がらせが、起き上がれないように押さえつけてまで執行するようになり、『これはさすがにおかしい』と内心焦った。
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