お互いの奇行を理解し合えない姉弟

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お互いの奇行を理解し合えない姉弟

 駅伝シーズン到来。 執拗(しつよう)に絡んできた弟が、聞き分けの良い家族に戻り、良好な関係を築けていた。 故障しないようにケアを手伝ってくれたり、栄養バランスの整った食事を用意してくれるので、ハードなメニューも軽々とこなし、全国駅伝でも自己新記録を達成。  しかし、主な駅伝が終わる頃には弟の奇行が再発。 自室でバク転の練習をしていたら、家事を終えた弟が入ってきて(弟と共同部屋)『ブリッジと逆立ちをもっとやり込んだ方がいい』とアドバイスをしてきた。 指示通りやると、形になるまであと一歩の段階になり、弟がフォローに入った状態でベッドの上で飛ぶと大成功。 「やったぁ! ついに出来た!」  喜びを爆発させて、弟とハイタッチ! 弟も笑顔でタッチした手をぎゅっと掴み、ぐっと引き寄せてそのままベッドにドスン。プロレス、開幕。 『良かったな。バク宙もすぐに出来るよ』と、言いながらなぜか柔道技の縦四方固めを食らわせてくる。 “突然奇妙な動きをする“と、定評のある私ですら、弟の言動は理解し難い。テンションが上がると体当たりしてくる犬みたいなものだろうか?  首を極められ、この世と離脱しかねない苦しさに(もだ)えながら、“降参”とタップすると解放された。その一瞬のすきを狙って金的攻撃。 以前弟から『不審者に襲われたら、そいつの人生潰す気で狙え』とレクチャーを受けた。本意ではないが、師の教えは必ず守らなければならない。  タフな弟は数分後に回復し、『何すんだよ殺す気か!』と凶悪な顔で吠えたが、その言葉をそっくりそのまま返したい。  こうして、“変人と変人が合わされば普通になる“という俗説は立証されない事がわかった。  e2321f95-9aff-489a-b60e-05f7b1402cfa
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