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姉が欲しい姉と現実を知る弟
弟の奇行に随分悩まされてきたが、まだそれが序章に過ぎなかったのだと思い知らされた冬の日。
友人の姉妹トークに羨ましさが爆発した私は、長女の責務を放棄して妹になるべく、とあるギャルゲーに手を出し、プレイヤー名を【愛しの妹・妹ちゃん】にして全キャラクターから妹扱いされるという、疑似姉妹プレイに夢中になっていた。
年上の落ち着いた美人姉に甘やかされたいという願望はどんどん募り、『生き別れたお姉ちゃんとか本当にいないの?』と母に電話するほど重症化。
『甘々なお姉ちゃんが欲しい』『お姉ちゃんに優しく可愛がられたい』
セミのように繰り返すと『俺が知る限りそんな姉は実在しない』と断言する弟。視線が痛い。
弟の立場からすればそうかもしれないが、妹だったら私も全力で甘やかす所存だ。筋肉ゴリラの分際で甘やかしてもらおうなどと考える事自体おこがましい。
しかし突然『俺が甘やかしてやろうか?』と言い出したブラザー。
「それって私のお姉ちゃんになるって……事?!」
「いや、兄貴の方。甘やかされたいんだろ?」
違う。甘やかしてもらえるなら何でもいいわけではない。お姉ちゃんだから憧れるのだ。弟が兄貴として振る舞われても、元々そんな感じだからちっとも嬉しくない。
『この話はこれでお終いだな!』とギャルゲーに戻ろうとして、戻れなかった。
“こっちにおいで”と微笑みながらベッドの方へ引きずり込む実弟。
文面だと少女マンガ的な雰囲気に見えなくもないが、とりあえずギラギラしたオッサンが微笑みながらベッドに引きずり込む図を想像して欲しい。そういった類のおぞましさがある。
そして、“甘やかすとかいいつつ、どうせまた関節技とか仕掛けてくるんでしょ“と疑っていたら、ほらご覧なさい。安定の腕ひしぎッ!
散々私を痛めつけた後、普段は廊下で披露する噛み付き癖を、ベッドの中でもやってきたので、形容し難い恐怖を味わった。
結局、弟の“甘やかし”とは何だったんだろうか。
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