烙印

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「何なんだよ、お前わよ!」  ああ。やっぱり、さっさと帰れば良かった。案の定、路上で女子高生に絡んでいた男は、間に入った俺に向かって凄んできた。  今日の日雇いバイトの現場は新宿だった。とっとと帰りたかったが、久し振りに現金が手に入り空腹にも勝てず、立ち食い蕎麦でも食べて帰ろうかと思い入った路地で、40代ほどの男が女子高生に絡んでいた。  まったく。時計の針が天辺をさすような時間まで制服で遊んでいるのも自業自得だと、方向を変えようとした時だった。女子高生と目が合ってしまった。彼女は俺から目を離さなかった。  勘弁してくれと思いながら、覚悟を決めて女子高生に近づいた。 「困ってる? よね」  立ち去ろうとしておいて言えた台詞ではない。苦笑いで問いかけると、女子高生は俺の腕を掴むと、男から隠れるように俺の後ろに回り込んだ。 「何なんだよお前わよ!」 「いやーさすがに制服着た子はマズイと思うんですよ。人の目もあるし、自分の為にも、やめておいた方がいいですよ」  俺はあくまでも邪魔する気はなく、やめておいた方が身のためですと低姿勢で接した。それなのに男は、いきなり殴りつけてきた。  俺が抵抗せずに殴られていると、女子高生の悲鳴で何人かが足を止めた。しかしそれだけだった。俺はされるがままに路上に倒されて足蹴にされた。  痛みよりも血の味が不快だった。そして涙で視界が歪みはじめた時だった。 「なに黙って撮ってんだテメェ!」  誰かの声と、何かが壊れる音がした。
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