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「それで。家庭や学校の問題だったり、性的被害などで行き場をなくした少女を保護するシェルターがあるんですけど。人手が足りなくて……。ボランティアじゃなくて、ちゃんと給金が出るので、お願い出来たらと思って」
「あんた珍しいな」
「そうですか?」
驚いて口を開いた兄貴に、女性警官は笑顔だった。
「俺は吉沢亮て言います。前科者ですよ」
「おい!」
俺は意を決して身分を明かした。兄貴が余計な事を言うなと肩で俺を小突いた。
「関係ありません。現にあなたは助けてくれたじゃないですか。失礼かもしれませんが、そういった方のほうが優しくできる事もあるんじゃないでしょうか」
女性警官の答えは力強く、その目は真剣なものになっていた。
「考えてみたらどうだ」
兄貴が俺に言うと、女性警官はお願いしますと頭をさげた。
「じゃあ考えてみて、連絡します」
俺がさっきもらった名刺を振って見せると、女性警官は「ありがとうございます」と言って去って行った。
「バレてたんじゃねえか。兄貴って呼んで、日雇いだからよ」
「だとしても珍しい警官すね」
「いい出会いかもしれねえぞ。気立ても良さそうだ」
「若すぎるって」
兄貴は笑いながら俺の肩を抱いた。
「とりあえず今夜は家に来い。家なら前科も何も関係ないから好きなだけ居ろよ」
「痛い、痛い。わかったよ」
不思議と今日はいい日だったんじゃないかと思えて、俺は笑っていた。
「コンビニ寄るから、焼き鳥だけは亮の奢りな」
「ごめんってば!」
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