頭を振る女 新人登録

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頭を振る女 新人登録

コンビニから帰ってきて部屋へ戻ろうとしたとき、それはいた。 昼間の暑い時間帯、エアコンのきいた部屋へ戻ろうとした私の視界の端で揺れる大きいもの。 (なにあれ?!……頭でかっ!!) 明らかに人ではない大きさのそれは、私の部屋の隣にある物置部屋の窓の前に正座をしながら、時代劇に出てくる女の人のように結われた髪を振り乱しながら激しく頭を振っていた。 それはもうヴィジュアル系バンドのライブでよく見るヘッドバンギングのような激しさ。ゆらゆらなんて優しい表現ではなく、<ブンッブンッ!>という感じの強い音がしそうなくらいの激しさだった。 さらに驚いたのはその大きさだ。 天井すれすれの大きさで頭が体の倍以上ある。明らかに異質なものだった。 しかし、それは首を激しく振る以外特に何かをすることはなかった。 じっと見ていた私の方を見ることもなく、ただ一心不乱に頭を振っていた。 私はこの何とも言えない光景を誰かと共有したかった。 とりあえず荷物を部屋において、妹のもとへ行き、今見たものを話してから一緒に物置部屋の前に行った。 ……まだいる。 あいかわらず激しく頭を振っていた。 「……あれ見える?ヘドバンしてるやつ。女将さんみたいな恰好の……  頭でっかち」 私は妹に聞いてみた。私と同じように変なものが見える妹。 妹は、自分の部屋にいる変なものたちのことを<住人>と呼んでいる不思議さん。 「いや?何も?変なのいるの?やばいやつ?」 「2m以上はありそう…頭が異常に大きい女が私の部屋に向かって  ヘドバンしてる」 そう話している間も、私にははっきり見えている。 激しく頭を振り続ける女。 それは夜、姿を消していた。 なぜあんなに激しく頭を振っていたのか、理由は全くわからなかった。 1週間後、それは再び現れた。 今度は妹の部屋にいたのだ。 妹の部屋にあるローテーブルの前に座って頭を振っていた。 しかし、前回見た時よりも小さくなっていた。160cmくらいの普通サイズ。 頭も激しく振ることはなく、ゆらゆらと赤子をあやす母親のような揺れ方。 「ねぇ、この前のヘドバン……そこにいるんだけど、縮んでるわ」 「どこ?住人のこと?新人かな?」 新人……。 私が知らない間にヘドバンの女は妹の部屋の住人になっていたようだ。
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