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明るい大通りまで来ると、俺たちはようやく走るのをやめた。
通行人が、訝しげな様子で俺たちを見ては歩き去っていく。
肩で息をしながら、膝に手を置いて、考える。
「な、何だったんだ、あれ……」
隣で呼吸を整える猫宮まなつに尋ねるが、また、「わからない」と彼女も顔面蒼白で首を横に振った。
不可解にも程がある。あれは、絶対に荷物掛けが軋む音と、縄の繊維がちぎれる音だった。奇しくも猫宮まなつが言っていた怪談のとおりではないか。
ということは、その音を聞いてしまった我々も、怪談どおり呪い殺されるということなのだろうか?
考えただけでゾッとした。
あの噂が本当なのだとしたら、俺と猫宮まなつは……。
嫌な想像をしかけたとき、「まじ!?」という女子の甲高い声が聞こえてきて、俺たちは顔をあげた。
向かう側の通りの店から、うちの制服を着たうちのクラスの騒がしい女子の集団が出てくるところだった。
皆、髪の色は明るく、スカートは短く、制服を着崩している。
ああいう輩は人目も気にせず、公共の場で騒ぐから嫌いだ……。
「うおっ」
ぼんやりと彼女らを眺めていたら、いきなり猫宮まなつが俺の腕を引っ張って路地へと連れ込んだ。
「おい、なにをするんだ」
「静かにして」
そう言った猫宮の声はかすかに震えていた。
一体なんなんだ、と思いながら、俺たちは路地から向こうの歩道の彼女らの動向を観察した。
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