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思い切ってイーちゃんの頭を撫でると、イーちゃんが鳴いた。猫の鳴き声だ。でも、口が開いていない。そういえばイーちゃん、あんまり動いてないな……。
「小村、このイーちゃん本当に本物の猫か?」
小村は目を軽く開き、それからにやにや笑いがとまらないとでも言うように口元を抑えた。
「小村?」
「ああ、ばれちゃった。そうです、イーちゃんはロボットです。最近話題になってるじゃないですか、癒やしロボット。知人からもらったんです。そういう機械を開発しているらしくて」
癒やしロボットか。最近耳にするようになったが、本当に需要があったとは。たしかに現代人は生活が無味乾燥になっているかもしれない。癒やしてくれる存在があれば、売れるのかも。
「そうなのか。なかなか可愛いな。本物みたいだし」
小村が頷く。
「そうなんです。めちゃくちゃ癒やされますよ。ですから伊塚さん、一緒にロボットを見に行きましょう」
「なんでそうなる」
俺の生活は確かに潤いがあるとはいえないが、そこまで癒やしが必要なわけでもないぞ。
「そう言わずに。今丁度セールで安くなってるらしいです。このチャンスを逃したら、後で三倍くらいの値段になるかもしれませんよ」
「じゃあ見るだけ……」
三分の一につられてしまうとは情けない。でも、見るだけだし。まあきっと買うんだろうけど。
見るだけだと言っているやつはだいたい見るだけで済まないからな。
「そうと決まれば、見に行きましょう。思い立ったが吉日ですよ」
「今から?! ちょっと待て、準備する」
明日とかだと思ったよ。
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