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俺たちは、同棲している。
でも、毎晩一緒にお風呂に入るわけではない。
特に佐藤くんがピアノ講師の仕事を始めてからは、帰宅の時間がずれることも多いし、夏が近づくと、汗を流しておきたくて先に入ったりもする。
だから、一緒にお風呂タイムを迎えるのは一週間ぶりだ――けど。
いくらなんでも見すぎだろ!
降りそそぐシャワーの粒を浴びながら、俺は平静を装うのに必死だった。
だって、見つめているのだ。
佐藤くんが。
湯船の中から。
俺のお尻を……!(大切なことなので2回言いました)
こういう時の佐藤くんは、たいていムラムラしている。
もちろん俺だって佐藤くんのことが大好きだから、広い背中とか、引き締まった筋肉とかを、ついジーッと見つめてしまうことはある。
多々ある。
恥ずかしいくらいある。
でも、佐藤くんの場合は、レベルが違うのだ。
今、佐藤くんの頭の中では、俺に「変態!」と罵られて当然レベルのエッチな思考が渦巻いているに違いない。
もしかして、またなにか検索したんだろうか?
そういえば、三日くらい前に佐藤くん宛ての怪しい荷物が届いていた。
いつもは面倒くさがって「理人さん、開けてー」って言うくせに、その時は「中身、見てませんよね?」なんて何度も確認されたあげく、俺がトイレに行っているうちにどこかにしまわれていた。
ラベルには、『グッズ』としか書かれていなかったけど……ん?
グッズ?
ま さ か。
「理人さん」
「ひぇっ……!?」
しまった。
佐藤くんが急にザバァッ……と立ち上がるから、変な声が出てしまった。
俺のおしりを見つめていた佐藤くんに気づいたことを、佐藤くんに気づかれてしまっただろうか?
一瞬ドキッとしたけど、佐藤くんは何も言わずにただ俺の隣に立った。
鏡越しに、ついソコに行ってしまいそうになる視線を無理やり引き剥がす。
「先に出ますね」
「え、なんで?」
いつもなら、俺がいくら「さっさと出てけ」って訴えても、俺にいろいろするまでは絶対に出ていかないのに。
佐藤くんは俺の尖った唇を指先でトントンすると、ニッコリと笑った。
「ちょっとやっておきたいことがあるんで」
そして俺に「ちゃんと身体の隅々まで洗ってくるように」なんて言いつけてから、本当に出ていってしまった。
身体の隅々まで?
それってつまり、アソコもちゃんと……って、言われてる……?
佐藤くんの〝やっておきたいこと〟ってなんなんだろう。
やっぱり、三日前届いたあの箱の中にそういうオモチャが入っていて、今夜それを俺に使おうとしてる、とか……?
「……」
俺は、ボディソープの泡にまみれた手のひらを見つめた。
佐藤くんがなにをしようとしているのかは分からないけれど、それがうっかりアソコの〝洗浄〟だとか、〝準備〟だとかだったら困る。
だって、それだけはほんっとーのほんっとーに苦手なんだ……!
「佐藤くんにヤられるよりは、マシ……か」
俺は肺の中に残っていた空気を「ふううううううぅぅ……」と吐き出し、ゴクリと唾を飲み込んでから、滑る指先をそっとソコに差し入れた。
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