俺を見つめるお前が悪い!

3/5
145人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 決死のアレやコレをやり終えてお風呂を出ると、佐藤くんがいなかった。  リビングを通り過ぎて寝室を覗きこむと、佐藤くんの後ろ姿があっちやこっちやに行ったり来たりしている。  よく見ると、ベッドメーキングしているようだった。  でも、なんで?  シーツは、昨夜変えたばかりなのに。 「佐藤くん……?」 「あ、理人さん! うわ、なんで裸!?」 「え!? だ、だって、佐藤くんがっ……」 「ああでも、ちょうどいいや。裸の方が気持ちいいだろうし」 「へ……?」 「じゃじゃーん!」  佐藤くんが、効果音とともに両手を広げてみせた。  綺麗にメーキングされた俺たちのベッドが露わになる――と。 「なんだ、これ」  佐藤くんが取り替えたシーツは、水色に変わっただけじゃなくて、素材も新しくなっていた。  なんだか……ツルツル? 「最近、蒸し暑くて寝苦しくなってきたでしょ。だから、ゲットしてみました!」 「え……」 「冷感シーツ!」  冷感?  なるほど……確かに、触ってみると、ツルツルなだけじゃなくて、ひんやりしている。  これなら、暑い日でも快適に寝られそうだ――けど。 「もしかして、佐藤くんの言ってた〝やっておきたいこと〟って、これ……?」 「はい!」 「じゃ、じゃあなんで『身体の隅々まで洗ってこい』なんて言ったんだよ!?」 「え? せっかく新しいシーツにするから、綺麗な身体で冷感を味わってほしかっただけ……ですけど……」  佐藤くんの語尾が消滅し、視線がゆっくりと俺の上を這い回った。  見られたところが、軌跡を描くように熱くなっていく。  ソコも。  アソコも。  あーんなトコロまで。  佐藤くんは、目で味わうように俺の身体を堪能する。  うっかりアレが元気にならないよう精神統一しながら、俺は全力で知らんぷりした。  でもきっと、佐藤くんにはとっくに全部バレているんだ。  俺が裸でいる理由も、佐藤くんの顔を直視できない理由も。  後ろの異物感が消えてくれなくて、もじもじするのを止められないことも。  だって、まだ残ってる。  指を突っ込んだ感覚も、その突っ込んだ指で一生懸命ほぐした感覚も。  全部、ソコに、しっかりと。 「もしかして、理人さん――」 「あ、あー! やった! やったあ!」  俺は、助走をつけて勢いよくベッドにダイブした。  ボヨンッと跳びはねた視界の真ん中で、佐藤くんの眉間に皺が寄る。 「理人さ――」 「ほんとだ! ものすごく冷たい!」 「理人さん! 話を――」 「すごい! 気持ちいい!」  佐藤くんの言葉を、渾身のゴロゴロで遮る。  ゴロゴロ。  ゴロゴロ。  右へ左へと転がりながら、シーツの冷感を楽しむ。  ふははははは。  この機敏なゴロゴロには、さすがの佐藤くんも追いつけまい。  ふはははは――… 「ぐへッ!」  突然肺を押しつぶされ、変な声が出た。  ちょうどうつ伏せになっていた瞬間を狙って、佐藤くんがベッドにダイブしてきたらしい。  いや、ベッドにじゃない。  俺の上に。 「さ、佐藤くん! 重っ……」 「あれ?」  俺の喉が、ヒュッと鳴った。 「なんでだろう」 「……っ」 「柔らかい」  佐藤くんの指先が、俺の窄まりをまさぐった。  とろとろに解れた襞を数えるように揉みほぐしたと思ったら、ちゅぷんっと中に侵入してくる。 「ん……っ」 「なかなか出てこないなあって思ってたんですよ」 「やめっ……」 「一人でなにしてたの?」 「なに、って……」  その顔は絶対分かってるだろ、このやろう! 「さ、佐藤くんが俺のお、お尻ばっかり見つめるから! てっきり、そういうことだと思って――」  がぶり、と噛みつかれた。  無理やり捻られた首が痛い。 「ん……ん、ん……っ」  性急な口づけが突然止んだと思ったら、 「あ……!」  後ろからぎゅむっと握り込まれて、腰が浮いた。  勃ちあがり始めたそれを優しく愛撫しながら、佐藤くんが笑う。  なんでだろう。  大好きな笑顔なはずなのに、  怖い。 「理人さん」 「な、なんだよ」 「最高の据え膳をありがとうございます」 「なっ……!?」 「このままペロッと食べちゃいたいのは山々なんですけど、ぜひ理人さんに使わせていただきたいものがあって」  や、やっぱり――!  ていうか、 「理人さん『に』ってなんだ! 『に』って!」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!