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ある晴れた日の、昼さがり。
どろぼうさんは、ぼくを手にして歩いてた。
「今日は、あの人に会う。でも、その前に、このかさを返さなくちゃ」
やがて、見たことのあるお店が見えてきた。
ぼくが、おとうさんとはなればなれになった場所だ。
「……すまなかったな。今まで、ありがとう。きみのおかげで、すてきな人に出会えたよ。でも、『どろぼう』のままじゃ、ぼくはむねをはって彼女に会えない」
どろぼうさんは、さみしそうにぼくを見つめて、わらってた。
「きっと、きみの家族がおむかえに来てくれる。さようなら」
ああ、そっか。どろぼうさんと、もう会えないんだ……。
ふしぎだな。
なんだかかなしくて、なみだがポロリとこぼれてた。
その時だった。
「あっ! あれ、おとうさんのかさ!」
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