Rainy Distance

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 遠距離恋愛を始めて間もなく一年。彼は眩しすぎるほどまっすぐにコウを想ってくれている。彼女も負けないくらいの熱量を持っているつもりだが、それを素直な言葉で伝えるのは今でも抵抗があった。卑屈な性格ゆえか、それとも彼より年上だからなのか? 自分でもよくわからない。 だがハルは違う。大好き、寂しい、会いたい。どんな想いも感じた瞬間に発露する。そのために友人たちからは「男女が逆なんじゃない?」とたびたび失笑されてしまうのだが。 『一ヵ月と二十三日……』  しばらく会えていないことは分かっていたけれども、具体的な数字を出してみると軽い衝撃を覚える。互いに一人だけの時間を大切にしたい性格であり、これまでだって頻繁に会っていたわけではない。それでも、いざ顔を合わせれば時間の空白はほとんど感じず、一瞬でいつもの二人に戻れる。戻れるのだが──。  屋根を打つパラパラという雨音が妙に心を逸らせた。その不規則なリズムがふだん片隅に追いやっている小さな不安や寂しさをたちまち増幅させ、胸の中が占拠される。その息苦しさに耐えかねて自然と深い溜め息が出た。 はたして、これほど長く会わずにいて本当に大丈夫だろうか? 直近のやり取りは二日前のLINEが最後だ。その際も『疲れてヘトヘトだよー。今日はとにかくもう寝ます』というメッセージと、ゲッソリした顔の絵文字が五つも並んでいる。心配でならなかったが、起こしたり負担になったりするのが嫌で、スタンプは翌日の昼を待ってからそっと送った。
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