いつも心に備え付ける

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 そもそも、朝方の予報では雨が降るなんて一言も言っていなかった。  だから僕は安心して傘を持たずに会社へやって来たというのに。  なのに、降る。  激しく、降る。  いつもだ。  いつもそうだ。  降らないと言えば降る。  降ると言えば降らない。  一体、なんなんだ。  僕は天気予報そのものを憎まざるを得ない。  一応、普段から折り畳み傘は鞄の中に携帯している。  ――しかし使いたくはない。  一度開いたら最後、畳まねばならない。  ――無理だ。  絶対にクシャクシャになる。  クシャクシャになると、次に鞄へ忍ばせる時、気持ちが悪い。  それに無駄にスペースを使う。  なんなら、クシャクシャの折り畳み傘だけで鞄を占領してしまい、書類とか筆記用具とか、必要なものが入らなくなるし、最悪、書類もクシャクシャになる。  ――それは避けたい。  つまり開いたら、綺麗に畳まねばならない。  折り畳み傘を使うのなら、その後は綺麗に畳まねばならないのだ。  でも僕は畳めない。  ――つまり折り畳み傘は開けない。  となると一体、僕はどうすればいいと言うのだろうか。
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