ルサンチマン

137/153
前へ
/153ページ
次へ
安藤勝広の通っていた埼玉県立川口東高校の教員から匿名で週間タブーに安藤勝広の母清田明美と継父の虐待、ネグレクトの記事が大きく掲載された。 清田明美の夫で鳶職人の清田秀人の勤める芦川総建にマスコミが殺到した。 清田は鳶の作業を中断し、こっそり抜け出し赤羽のキャバクラふらわーのサラ20歳に会いに行った。 清田はウイスキーを注文した。 「もううんざり。 あんな年増の女狐に騙されたがためにさぁ。なぁ、俺可哀想だろぉ、サラ。」 清田はサラにもたれかかった。 「女狐って、最近よくテレビで見かける奥さんのこと?」 サラは水割りを飲んだ。 「んだ。あの性悪よ。 あいつもう42だよ。 くたばりぞこないのババアだよ。 嵌められたの。 それであいつはローズを妊娠して寝業で入籍に持ち込んだの。 とんだビッチババアだ。 売女がお似合いさ。 哀れな俺。 もう、ババアに一切愛情はないのよ。 ただ、ローズに同情してるだけ。」 清田は深いため息をついた。 「きよたん、可哀想。」 サラが清田の頭を撫でた。 清田はサラの膝の上に頭を乗せ、横になった。 赤羽ふらわーからサラのアパートに一泊した。 サラのアパートの前にマスコミが殺到し、待ち構えていた。 清田はマスコミを前に口を開いた。 「清田明美は安藤勝広の実の母親です。 間違いありません。 かつての夫だった安藤さんとの間に設けた息子です。 明美と出会ったのは大宮のスナックふゆこでした。 俺は21歳、明美は32歳でした。 明美は息子の存在を隠していました。 俺も独身だと信じていました。 明美は俺に積極的にアタックしてきました。若かった俺は盲目になりました。 明美を妊娠させた責任を取って仕方なく入籍しました。 その後、明美は中学生の息子がいることを明かしました。 目からウロコでした。 完全に騙されました。 勝広氏とはたった8歳しか離れていませんでした。 父親替わりは流石に無理でした。 明美は息子を家から締め出しました。 明美は息子に食事を与えませんでした。 明美は息子の高校進学を反対しました。 明美から俺にも安藤勝広の虐待に加担するよう脅迫されました。 週間タブーの記事は全て真実です。 清田明美はネグレクトし、虐待を行っていました。 俺も詐欺師である明美と生活するのは非常に辛かった。 安藤勝広というモンスターを生み出しのは明美の非情さ、冷酷さです。 明美とはキッパリ縁を切ります。 ハッキリ言って二度と顔を見たくない。 重い女に苦しめられました。 俺は明美と離婚します。」 清田秀人はマスコミの前で明美批判を繰り広げ、半分記入した離婚届をマスコミに公表し、ピースサインをした。 テレビを見ていた明美は腰が抜けた。 明美は何度も秀人に縋るように連絡したが、繋がらなかった。 明美はローズの前で号泣した。 ヤケクソになった明美は特大焼酎を酩酊するまでガバガバ飲んだ。 その日ローズに学校を休ませた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加