ルサンチマン

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僕は罪を犯しました。 最も卑劣な犯罪である殺人を犯しました。決して許されることではありません。僕は残酷な悪魔です。 僕は狂気に支配されている。 僕には何も無かった。 居場所が無かった。 愛が無かった。 金が無かった。 食べ物が無かった。 父を知らなかった。 母にはいつも彼氏がいました。 母は彼氏に夢中でした。 母は僕の存在が邪魔でした。 僕は母に消えてくれと言われました。 でも、僕は世間の隅っこでなんとか生きてきました。 誰も助けてくれない。 温かい部屋もない。 抱きしめてくれる人もいない。 自分でどうにかするしかなかった。 進学費用も拒絶されました。 働かなければならなかった。 勉強する時間はなかった。 食べるために働く、ただそれだけ。 だから僕は母に見てほしかった。 僕はエリートになりたかった。 一流大学に入って母を見返してやりたかった。 でも、結局見返せませんでした。 僕には能力がありませんでした。 僕は社会のゴミクズです。 僕は底辺の人間です。 母は義父や妹を愛していました。 僕は母に死んでくれと言われました。 でも、死ぬ勇気がありませんでした。 結局、怖くて怖くて死ねませんでした。 ただ、日日新聞の太田さんや女将の房子さんは優しくしてくれました。 房子さんの手料理が大好きでした。 子どもの頃からスナック菓子やカップ麺が主食でした。 房子さんのたわしコロッケやオムライスが大好きでした。 プライドだけが高い僕。 コンプレックスの塊の僕。 人が羨ましくて羨ましくてしょうがない僕。 現実逃避する僕。 配達準備、配達、勉強、営業、集金の繰り返し。 僕はとっても疲れていました。 疲れて疲れて疲れてきってしまいました。人生を消耗してしまいました。 プライドで慶陽と早稲川を受けてその全てに落ちました。 ある日慶陽と早稲川の通信教育部を知りました。 慶陽に合格しました。 通信教育部のくせに通学生を装って、嘘をつきました。 嘘に嘘を重ねて、終いには何が真実なのか分からなくなりました。 周りへの見栄が全てでした。 そんなちっぽけな見栄から慶陽大学日吉台キャンパスサークル棟に放火しました。恵まれた通学生に通信教育部の人間であることを否定されたのです。 僕の人格の全てが崩壊しました。 僕は心をズタズタに破壊されてしまったのです。 エリートが憎くて憎くて仕方がなかった。死ねばいい。死んでしまえ。 地獄に落ちろ。 その時、僕は彼らに強い殺意を覚えました。そして僕は殺人を決意し、実行しました。
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