ルサンチマン

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「ネグレクトや貧困には確かに同情に値する。 安藤、お前ホント辛かったなあ。 しんどくてしんどくて堪らなかっただろぉ。ただなぁ、あんたは間違ってる。 妬みや僻みが頭の中を支配している。 そんなんじゃ、幸せになれるわけない。 世の中、不条理で不平等なものだ。 この世はそういうシステムだからだ。 だからマイナスのエネルギーをプラスの力に変えて、社会のシステムをぶち壊すパワーで生きてほしかった。 自己責任と押し付けてくるやつらを黙らせるくらいに強く生きてほしかった。 憎しみや恨みからは何も生まれんぞ。 あるのは歪んだいびつな感情だけだ。 歪んだいびつな感情は時として刃になる。貴様は鋭利な刃を他人に向けた。 そして、他人の命を奪った。 そして、他人の未来を奪った。 そして、他人の可能性を奪った お前自身の自分勝手なエゴで。 いい加減にしろ、この人殺しが。 だからお前は全て失った。 お前の僻みや妬みが自らを破滅へと向かわせた。 人や社会のせいにするんじゃない。 言い訳はできんぞ。 甘えるんじゃない。 だから安藤、お前は生きろ。 生きて断罪されるんだ。 俺はお前の最期を見届けてやる。 お前が生きた証を証明してやる。 たとえ間違った人生だったとしても。」 安藤は砂浜で号泣して崩れ落ちた。  嗚咽を漏らした。 「安藤勝広、慶陽大学日吉台キャンパスサークル棟放火45名死亡、重軽傷者5名、北新地クラブ和恵のママ沼田和恵さん殺人で逮捕する。」 末松は安藤の肩を抱き、その手に手錠をかけた。 これから安藤勝広には大きな罰を受ける人生が待っていた。 犯した罪からは決して逃れられない。 その日の玄界島の夜空は皮肉にも星が煌々と輝いて綺麗だった。
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