ルサンチマン

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慶陽大学では空き教室に新たにカウンセリングルームを設置した。 通常いる産業医やカウンセラーに加えて、心療内科医、臨床心理士を増やした。被害に遭った学生以外にもサークル棟大火災で鬱状態やトラウマを訴える学生も数多くいた。 2019年 「かっちゃん、配達先が五件増えたよ。 くれぐれも間違えないで頼むよ。」 日日新聞西川口営業所のメタボ体型である太田安男57歳が寡黙な安藤勝広21歳に指示した。 「はい。」 勝広は小さな声で答えた。 時刻は午後11時半。 ワーカーマンで買った防水ジャケット、パンツのセットを着ている。 配達員たちは必死でチラシ入れをしている。 午前1時からの配達まで必死で作業をしている。 みんな、黙々と取り組んでいた。 口を開ける者はいなかった。 とにかくスピード、丁寧が日日新聞のウリである。 配達員は丸山39歳、今井43歳、関口29歳、安藤勝広を含め4名だ。 丸山は実は前科者だ。 9年前に宝石店で強盗をし、店員女性に 怪我を負わせた。 実刑4年で栃木刑務所で過ごした。 模範囚として仮出所した。 保護司の太田が自らの新聞販売店に受け入れた。 その過去を知る者は太田とその妻以外いない。
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