待ち受ける冷気を統べし者

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待ち受ける冷気を統べし者

 「昨日はありがとうね。龍雅君」  「気にするな」  黒輝龍雅と氷魅夜姫華は違う高校の制服を着ながら一緒に歩いていた。  龍雅の妹である黒輝銀羽、親友である姫宮藍紅は怪我こそ少なかれとても動ける状態にはないので2人とも学校を休んでいる。  龍雅が自身の両親と、藍紅の両親に上手く説明してくれたのだ。  勾玉とモンスターの知識が付いたとは言え、妃刺夏により恐怖を与えられ混乱していた自分の変わりに説明してもらえて助かった。  「何だかまだ不思議な感じ、実際に起こりそれについての知識もあるのに何処か信じられないでいる私がいるわ」  龍雅は姫華の台詞に足を止める。  「俺も、そうだった」 数秒後に口を開いた。    「というか今もそうだ。最初の頃に比べればマシになったが何処か浮世離れしたこの力を信じられなかったものだ」  彼の右手に結晶が生成される。      「『皇帝の玉座』。俺は目指す。俺が俺自身であるためにな」  彼の言葉に一切の躊躇いもない。 「流石、銀羽のお兄さんね」  フン、と鼻を鳴らす龍雅。  銀羽の芯の強さは兄である龍雅譲りなのだと姫華は実感する。    「んで、もうすぐ我々の学校に行く為に分岐しなければならないのだが‥‥‥」  龍雅はある公園の砂場に目を向けた。  「あそこにいる冰龍イヴェルカーナの勾玉使いに対してどう思う姫華」  二人が道を歩きその公園に近づくにつれ感じていた勾玉使いの反応。  その公園を見ると真っ白な髪型でツインテールの制服を着た少女が八の字座りでだらんと下を見ていた。  まるで遠目からは人間によく似た人形にしか見えないがよく見ると両腕から血が滲み出ている。  自傷でもしたのだろうか‥‥‥?。  「誘ってるのか?それにしちゃ見やすいた罠だが‥‥別の道を行くか」  「そうね」    二人が別の道を行こうとした際、その女はノーモーションで立ち上がり一瞬で冷気を纏う。  「な、なにが起きてるの!?」  「お母さん!水道の水が凍ったよ!」  周囲は一瞬で凍り付き、公園で遊んでいた幼子を連れ保護者は一目散に逃げた。    「連れない方々ねぇ‥‥、どうして私からお逃げになるのかしら?」  「貴様の行動が常軌を逸脱してるからだ。公園で遊ぶならもっと常識は弁えろ」  毅然と言い張り龍雅は少女の前に立った。  少女は笑顔を浮かべながら楽しそうに言う。    「あら嬉しい。私と遊んでくださるのね」  「遊ぶ?。殺し合いの間違いだろ」  「勉強前の殺し合いなんて前代未聞ね‥‥。龍雅君手を貸しましょうか?」  「いらん。俺一人でよい」  姫華の助力の申し出を断り龍雅は結晶と蒼炎を纏い冰龍の勾玉使いと対峙する。  「随分と自信がある殿方なのね。羨ましい‥‥‥‥‥同時に―――。    『物凄く憎たらしい』    物理的じゃない精神的な悪寒に姫華は身体を震わす。  1つの穢れもない透き通った真っ白な鱗を持つ冰龍に反してあの少女の心はドス黒いのを感じ取る。    「自己紹介が遅れましたね。私は綺里華舞雪(きりかまき)。自分や他人の不幸が最上の幸福な最低な人間です」  昔のヨーロッパの貴族の様に裾の短いスカートを両手で少し上げ二人に挨拶をした。  整った顔立ちでスタイルもいいのに何故こんなに精神がネジ曲がっているのだろうか姫華には不思議だった。  彼女の趣味か知らぬが黒いニーハイソックスの上の太腿には真っ白なガーターベルトが走っていた。    大抵の異性なら舞雪の見てくれに落とされるかも知れないが龍雅はどうでもよく思っていた。  「我が名は黒輝龍雅。綺里華、ここでお前を倒しその冰龍の勾玉はいただくぞ」  「まぁ、乱暴な殿方ですこと。いいわ。黒輝君。私に貴方の不幸を見させてください‥‥‥冰龍の幻影」  現実世界から龍雅と舞雪の姿が消える  
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