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過去からの魔の手
二人の女子生徒は会話に花を咲かせながら帰路についていた。
「理雄君無事そうで良かったよね〜」
「うん!。また10人で楽しく過ごせると良いよね紫陽花(はるか)ちゃん!」
黐迅の問いかけに紫陽花は半分上の空で「そうだね」と相槌をうつ。
「それより残念だったね。黐迅ちゃんの思い人君が今日理雄君とデートだなんて」
「きゃあ〜言わないで〜紫陽花ちゃん!。しょうがないよ理雄君とタケちゃんは大親友だし。告ってもない私が出しゃばるのも馬鹿らしいよ」
「そっか……いつか猛君に思いを伝えられると良いね」
「うん!」
紫陽花は会話すればするほど、友情を深めれば深めるほど、感じざるを得ない事があった。
『自分はこの人達と一緒にいていい存在じゃない』
紫陽花は別に高校デビューしたわけでも、友達が少なかったわけでもないが……元々地味だし化粧や身だしなみもあまり興味がなかったひょんなことから理雄達と一緒になったが自分は陰キャに過ぎない……。
この思いはこれからも変わらないだろう。
「どしたの?紫陽花ちゃん。何か考え事?」
「黐迅ちゃん……。私ねこんな事言ったら多分ドン引き確定だと思うんだけど言うね。どうして皆私みたいな陰キャを仲間だと思ってくれるんだろう」
終わったと紫陽花は思った。
自分の立場に立ってもこんなキモい事言うやつなんて相手したくないのに自分は何を言ってるんだろう。
黐迅はというと「え~と」と考える仕草を取っている。
「紫陽花ちゃんが陰キャ?……全然そんな事思わないよ。聞き上手だし私は少なくとも大切な親友の一人だと思ってるな」
「……ありがとう。素直に嬉しい」
「何かあったの?私で良ければ聞くよ?」
「中学生の時何だけどね―――」
紫陽花は自分が中学の時男子にいじめられていた話をした。
大人しくて相手を無視してたのが行為を増長させたらしい。
クラスの女子にハブられたり、性行為を求められたり…だが彼女は応じず卒業まで過ごした。
中学の卒業式は欠席したが。
「そんな……過去が」
「昔の事と思ってたんだけど…今の幸せ考えたら急にこの幸せも壊れるんじゃないかって不安になって!」
泣く紫陽花を黐迅はよしよしと宥める。
「辛かったね。大丈夫だよ……今は皆がいるから」
「ありがとう黐迅ちゃん……」
「陰キャだとか陽キャだとか関係ないよ。紫陽花ちゃんは紫陽花ちゃんなんだから!元気出してね!」
「……うん!」
何だか今日は二人の立場がいつもと変わったような気分だ。
「紫陽花ちゃん!パフェでも食べて元気だそう!」
「うん!よーし、いっぱい食べるぞ〜!」
「おー!ガフッ……」
喜ぶ黐迅は突然吐血した。
「ハァ……ハァッ!、ハァ、ハァ」
「ち、黐迅ちゃん!?」
「これは久しぶりですねぇ」
長い間聞かなかったその声音に紫陽花は身を震わした……。
「白華紫陽花」
紫陽花の名を口にした少年は不敵な笑みを浮かべた。
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