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「でも俺、ガタイいいから」
ほんの数ヶ月前まで柔道をしていた自分なんかとは比べ物にならないように思えた。
そんな彼を天翔は噛みつきそうな表情で睨めつける。
「ふん。みたとこ脳みそまで筋肉なんじゃあないの」
憎々しげ、といった言葉がふさわしい険悪ぶりだ。
しかし太郎は少しホッとしていた。
「顔、大丈夫ですね」
「はぁ?」
「いや……ビンタされてたっぽかったから」
あの直後はこちらを振り向きすらしてもらえなかったが、今日見ると頬が腫れている様子はない。
月乃も心配していたし、ともごもご言い訳を口走る。
「ああ、なるほど」
ため息まじりにうなずいた天翔は、少し長めの髪の先を触りながら言った。
「心配してくれてありがとう。でもお生憎さま。これで理解したと思うけど、もう僕にかまわないでくれ」
「いや、あと肩が……」
「もういい」
去っていこうとする姿に手を伸ばせば、あっさりと避けられる。
「僕のことなんだと思ってんだ。このクソガキ」
綺麗な容姿のわりに人相はひどい。心の底から嫌そうな顔の天翔を見ながら漠然と思った。
でもそれがすごく似合うような気もする。
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