act23 早苗の長い1日

5/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
伊達が帰って静かになった事務所に早苗のスマホが鳴り響く。 「はい…、はい…、分かりました、すぐ行きます」 電話を切ると東郷に向き直る。 「兄貴も一緒に来て!」 東郷の腕を引っ張って出掛けた。 向かった先は都内のデパートの特設ステージだった。 「早苗ちゃん、何がどうなってるの?」 「綾瀬先輩から、映画イベントに出演するのに人が足りないんだって…」 それがさっきの電話だ。 「映画イベント?」 「ほら、大学の映画コンクールがあるって言ったじゃない」 数ヶ月前の話だ。 「ああ~、そう言えば綾瀬さんに格闘を教えたっけ…」 「その開幕イベントらしいわ」 コンクールの対象は全国の大学から審査によって選ばれた15作品、初日には監督や出演者らが出演するイベントが行われる。 「…俺達に出演しろって?」 「裏方の人を出すから私達はその代わりよ」 会場に着くと綾瀬が待っていた。 「藤田早苗、すまないな 東郷氏もかたじけない」 「あ…あの、先輩…その格好?」 綾瀬はいわゆるバニーガールの格好をしていた。 「これが私の役ゾンビバニーだ」 格好はバニーだが、顔はゾンビメイクになっている。 「綾瀬!埴輪のマスクがないぞ!」 白い全身タイツに赤パンツ姿の伊達が出て来た。 「なっ!なんで伊達先輩がっ!?」 早苗が目を丸くした。 「ふ、藤田さん?東郷さんも!?」 伊達も目を丸くした。 「なんだ?知らなかったのか? 伊達京介には埴輪マンのスーツアクターをやってもらったんだ」 作品は『埴輪マン4 ゾンビ島の大決戦』、埴輪マンが活躍する特撮ヒーロー物だ。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!