7人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
伊達が帰って静かになった事務所に早苗のスマホが鳴り響く。
「はい…、はい…、分かりました、すぐ行きます」
電話を切ると東郷に向き直る。
「兄貴も一緒に来て!」
東郷の腕を引っ張って出掛けた。
向かった先は都内のデパートの特設ステージだった。
「早苗ちゃん、何がどうなってるの?」
「綾瀬先輩から、映画イベントに出演するのに人が足りないんだって…」
それがさっきの電話だ。
「映画イベント?」
「ほら、大学の映画コンクールがあるって言ったじゃない」
数ヶ月前の話だ。
「ああ~、そう言えば綾瀬さんに格闘を教えたっけ…」
「その開幕イベントらしいわ」
コンクールの対象は全国の大学から審査によって選ばれた15作品、初日には監督や出演者らが出演するイベントが行われる。
「…俺達に出演しろって?」
「裏方の人を出すから私達はその代わりよ」
会場に着くと綾瀬が待っていた。
「藤田早苗、すまないな
東郷氏もかたじけない」
「あ…あの、先輩…その格好?」
綾瀬はいわゆるバニーガールの格好をしていた。
「これが私の役ゾンビバニーだ」
格好はバニーだが、顔はゾンビメイクになっている。
「綾瀬!埴輪のマスクがないぞ!」
白い全身タイツに赤パンツ姿の伊達が出て来た。
「なっ!なんで伊達先輩がっ!?」
早苗が目を丸くした。
「ふ、藤田さん?東郷さんも!?」
伊達も目を丸くした。
「なんだ?知らなかったのか?
伊達京介には埴輪マンのスーツアクターをやってもらったんだ」
作品は『埴輪マン4 ゾンビ島の大決戦』、埴輪マンが活躍する特撮ヒーロー物だ。
最初のコメントを投稿しよう!