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7
夏だし、大人は生ビールと行きたいところだが、
バイトは未成年が多いので、健全に食事会だ。
アルコールが強くない俺にとっては、ありがたくもある。
「それじゃみんな、お疲れ様です」
俺の音頭で、冷たい飲み物が入ったグラスが合わせられる。
普段からフランクな職場だけど、
この日は毎年ほんとに友達同士みたいになる。
はす向かいの和里君も、パートさんたちにいじられて楽しそうに食事している。
ふと、和里君と目が合って、思わず視線を外してしまう。
すとんと音がして、隣に和里君が座った。
いちいちドキドキしてしまう自分が恨めしい。
「ゼンさん好き嫌いないんすか?」
大人にいきなりその質問?
と思わず笑ってしまう。
少し緊張がほぐれてありがたい。
「大人だからね、なんでも食べるよ」
「いやいやいや、大人でも好き嫌いはあるでしょ?」
確かに、そうだな。
でも、開口一番の質問でそれはない。
「私服も渋いっすね」
俺を上から下まで見て、そういう。
会社の食事会だし、あまりラフになりすぎないように、
でも固くなりすぎないようにポロシャツにチノパン。
遊びもなんのもない平凡な服装だ。
「そうかな?和里君はいつもおしゃれだよね」
アクセも髪型もいわゆるトレンドをしっかりとらえている。
「いつも無難な感じになっちゃうんですよね」
そうかな、とってもよく似合っている。
「でも、何着ても子供っぽくなっちゃうっていうか、
でも、シンプルなのだと着こなす自信なくて」
なるほど、それでシンプル代表の俺にあこがれてるんだ。
「いや、和里君は自分をよくわかってるいいセンスだと思うよ」
「身長もゼンさんみたくあったら、もっとかっこいいんでしょうけど」
そう言って俺の頭に手のひらを乗せてくる。
動悸が早くなる。
「筋トレとかはしてるんですか?」
かと思えば今度は、そでから出た俺の二の腕に手を伸ばす。
少し触れたところで、俺はすっと腕を引いてしまう。
「あ…すいません」
ちょっと引いてしまった和里君に、慌てて、
「くすぐったいから、やめてよ」
と笑ってごまかす。
「えぇ、くすぐったいとかゼンさんかわいい」
となりで聞いていた、バイトの子たちに茶化される。
そんなことはお構いなしに、和里君は、自分の二の腕の筋肉を見せてくる。
「おぉ、鹿間さんすごいっすね」
「でしょ?」
そこからは、バイトの男の子が二の腕自慢をし始める。
女の子が和里君の腕に触るのを見て、なんだかイラっとしてしまう。
でも、それって別に特別じゃない。
そう自分に言い聞かせる。
「はいはい!俺腹筋もすごいです!」
1人の子がそう言うとシャツの裾をちらっとめくる。
確かにいい腹筋だ。
女子もキャーキャー言っている。
「ゼンさんは?」
急に飛び火してきてびっくりする。
「いや。俺は…、ていうか女の子もいるし、こんなおっさんの体見せらんないよ。」
犯罪だ…。とか言いながらうまくかわした。
「デザート食べるよね?もうおねがいするけどいい?」
その場を収めるために俺はみんなをまとめる。
「はーい」
バイトたちは、お利口に席に着く。
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