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夏だし、大人は生ビールと行きたいところだが、 バイトは未成年が多いので、健全に食事会だ。 アルコールが強くない俺にとっては、ありがたくもある。 「それじゃみんな、お疲れ様です」 俺の音頭で、冷たい飲み物が入ったグラスが合わせられる。 普段からフランクな職場だけど、 この日は毎年ほんとに友達同士みたいになる。 はす向かいの和里君も、パートさんたちにいじられて楽しそうに食事している。 ふと、和里君と目が合って、思わず視線を外してしまう。 すとんと音がして、隣に和里君が座った。 いちいちドキドキしてしまう自分が恨めしい。 「ゼンさん好き嫌いないんすか?」 大人にいきなりその質問? と思わず笑ってしまう。 少し緊張がほぐれてありがたい。 「大人だからね、なんでも食べるよ」 「いやいやいや、大人でも好き嫌いはあるでしょ?」 確かに、そうだな。 でも、開口一番の質問でそれはない。 「私服も渋いっすね」 俺を上から下まで見て、そういう。 会社の食事会だし、あまりラフになりすぎないように、 でも固くなりすぎないようにポロシャツにチノパン。 遊びもなんのもない平凡な服装だ。 「そうかな?和里君はいつもおしゃれだよね」 アクセも髪型もいわゆるをしっかりとらえている。 「いつも無難な感じになっちゃうんですよね」 そうかな、とってもよく似合っている。 「でも、何着ても子供っぽくなっちゃうっていうか、 でも、シンプルなのだと着こなす自信なくて」 なるほど、それでシンプル代表の俺にあこがれてるんだ。 「いや、和里君は自分をよくわかってるいいセンスだと思うよ」 「身長もゼンさんみたくあったら、もっとかっこいいんでしょうけど」 そう言って俺の頭に手のひらを乗せてくる。 動悸が早くなる。 「筋トレとかはしてるんですか?」 かと思えば今度は、そでから出た俺の二の腕に手を伸ばす。 少し触れたところで、俺はすっと腕を引いてしまう。 「あ…すいません」 ちょっと引いてしまった和里君に、慌てて、 「くすぐったいから、やめてよ」 と笑ってごまかす。 「えぇ、くすぐったいとかゼンさんかわいい」 となりで聞いていた、バイトの子たちに茶化される。 そんなことはお構いなしに、和里君は、自分の二の腕の筋肉を見せてくる。 「おぉ、鹿間さんすごいっすね」 「でしょ?」 そこからは、バイトの男の子が二の腕自慢をし始める。 女の子が和里君の腕に触るのを見て、なんだかイラっとしてしまう。 でも、それって別に特別じゃない。 そう自分に言い聞かせる。 「はいはい!俺腹筋もすごいです!」 1人の子がそう言うとシャツの裾をちらっとめくる。 確かにいい腹筋だ。 女子もキャーキャー言っている。 「ゼンさんは?」 急に飛び火してきてびっくりする。 「いや。俺は…、ていうか女の子もいるし、こんなおっさんの体見せらんないよ。」 犯罪だ…。とか言いながらうまくかわした。 「デザート食べるよね?もうおねがいするけどいい?」 その場を収めるために俺はみんなをまとめる。 「はーい」 バイトたちは、お利口に席に着く。
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