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「ゼンさんこそ、そんだけかっこよかったら、 女の人もほっとかないですよね」 「え?」 「ゼンさん彼女とかいないんですか?」 なんだよその質問。 戸惑っていると 「お待たせいたしました」 とスタッフが飲み物を持ってきた。 静かにグラスとカップが置かれ、 「ごゆっくりどうぞ」 と下がっていく。 「どんな(ひと)がゼンさんみたいないい男と付き合えるんだろう」 グラスを見つめたまま、そう呟く和里君。 「いや、俺は…」 なんて言おう。ちょっと間がいてしまう。 今までの彼女に言われたことをふと思い出す。 「俺は、まじめなだけのつまらない男だよ。」 そう言って、カフェモカを口に流し込む。 甘くて優しい液体が、のどを通るのがわかる。 「そんな、スタッフはみんなゼンさんのことそんなふうに思ってないですよ。」 なんだか必死な和里君。 俺はいい仲間(スタッフ)に恵まれて幸せだな。 「ありがと」 「俺いつも、ゼンさんの身のこなしとかしぐさとか、結構真似してるんです。」 大人の男になりたくて!と息巻いている姿がすでにとは程遠い。 笑いそうになって、咳払いでごまかす。 「そっか、じゃあいいお手本にならなきゃなぁ」 「あぁ!なんか子ども扱いしてません?」 だって子供だよ、かわいいし。 高校生組にも、かわいいとか言われてるし。 「まぁ、雰囲気って大切だよね。」 俺がカップの中でくるくる回すスプーンを和里君も見ている。 あぁなんて至福の時間なんだろう。 和里君にとっても俺が特別だと勘違いしてしまいそうになる。 和里君が二十歳になったら、もっと雰囲気のいいバーでも連れて行って、 いいお酒を飲ませてやりたい。 酔ったら和里君はどんなになるんだろう? 「ゼンさんなんかおかしいですか?」 そう言われて、にやついてしまっていたことに気づく。 「あ…。ごめんごめん思い出し笑い」 そう言って、ほほを引き締める。 「ごちそうさまでした」 コーヒー1杯で、深々とお礼をする和里君。 まぁ安いとは言えないコーヒーだけど、 俺にとってはプライスレスなコーヒーだ。 「うん。またあさってね」 元気に手を振ってから遠ざかっていく背中を見つめて思う。 あぁ、楽しい時間てあっという間だなぁ。
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