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翌朝はどちらも口数が少なかった。
もっと色々話しておかなければと焦る気持ちが、オストの口を重くしていた。もっと明るく振る舞わなければと焦る気持ちが、レティから笑顔を奪っていた。
それでも、旅の行程は消化されていく。
「占者の地図によると、この辺りに横穴があるらしいのですが…姫様、そちらはどうですか?」
山脈に近づくにつれ、起伏に富んだ岩場が行く手を阻む。目的地を大まかに記した地図も、ここまで来てしまえば役に立たない。切り立った岩壁沿いに進み、横穴の奥へ行けという頼りない情報のみを頼りに進む。
「こちらにも特にそれらしきものはありませんわ。」
「こうも巨石だらけでは探しようもないですね。」
このまま見つけられなければ良いのに、という言葉をオストは飲み込む。
「ここまで来たんですもの。早く見つけなくては…。」
命が惜しくなってしまうとレティは焦る。
「…陽が高くなりましたね。とりあえず昼食にしませんか?」
レティの言葉に苦しくなる胸を内に抑え、レティに提案する。2人とも慣れない岩場に体力を消耗しているから、後ろ向きにもなるのだ。そう自分を騙して。
2人は昼食後も右往左往しながら探索を続け、3時間ほどでようやくそれらしい横穴…というより岩の裂け目を発見した。
「見付かっちゃいましたわね。」
「見付けてしまいました。」
同時につぶやき、顔を見合わせて笑い合う。そして、オストを先頭に中へと入っていった。
2人とも、もう覚悟はできていた。
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