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「「え?」」
レティと魔王の声が重なる。
一拍遅れて魔王の肩から障気が吹き出す。
「影とか言ってた割りに手応えは物体、か。ってことは斬撃もダメージになる、だな。」
地に落ちた魔王の右腕に剣を突き立て、オストは静かに言う。串刺しになった元右手が障気に戻って霧散する。
「舐めるなよ、人間風情がァ!」
魔王が言うや否や、肩口から零れる障気が固まって右腕が再生する。しかしオストが再び斬りつけ、肘から先が切り落とされる。
その攻守が逆転した光景に、レティはふと思い出す。この半年、同行していた騎士たちは大なり小なり傷を負い、レティの癒しの技をもってしても旅が続けられなくなっていったことを。しかし、オストに関して、癒しの技をかけた覚えが全く無いことを。そして気が付く。
「もしかして、オスト…物凄く強いんですの…?」
レティの回想の間も、オストの激しい斬撃に、魔王は身体のパーツを失っては再生するを繰り返すばかりで、全く攻め込めずにいた。
「バ、バカな…人間ごときがこんな…!?」
「姫様を守るため、絶え間なく鍛練を続けたからな。その全力でもって、お前を、倒す!」
オストが魔王の体を切り裂くたび、微量に、しかし確実に障気が失われ魔王の力を奪っていく。しかしあくまで人の身。初撃の破壊力、機動力をそういつまでも維持はできないのは自明。
「無茶なことを…!ですがオスト、援護しますわ!」
絶え間無い攻撃の繰り返しに切れそうになるスタミナを、後方からレティが癒しの技で繋ぐ。レティのあたたかい奇跡の技をその身で感じ、オストは吠える。
「オおォ!姫様に守られた俺は…無敵だ!」
この力で守ってみせる、と更に攻撃が激しさを増していく。
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