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昔はあまりにも怖くて、泣いてしまった僕を母に慰めてもらっていた。
今もほんの少しだけ怖くは思うものの、それよりも上回る、見ていてワクワクとした気持ちが湧き上がってくる。
どうしてなんだろう。
ひたり、と両手を窓に添えた。──その時。
ガッと、急に窓から生えてきた手に掴まれた。
目の前のありえないことに頭が追いつけず、けれども、その手が窓へと引きずり込もうとするのを、慌てて抗う。
その際に、暗がりとなった窓ガラスに自身の姿が映し出されたが、驚いた。
窓に腕を引っ張られ、焦っている表情の顔が映し出されるはずだ。だが、そこに映し出されたのは、僕の手を掴み、微笑む"僕"。
違う。僕だけど、僕じゃなくて。
「·····あめ。·····あっ」
一瞬、気が緩んでしまったせいで、自分とは思えない力に引きずり込まれた。
「やっと会えた。爽雨·····」
後ろから抱きしめてくる、僕と同じ声。
触れられている。
あの時は、触りたくても触れなかったあめのことが、こんなにも簡単に触れられることが出来るだなんて。
でも、どうして。
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