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「あきら、くん?」
小さく吹き出した。キスで目を覚ますとか、お姫様かよ。
「ただいま、光弦」
「ん、おかえり」
ふにゃ、と笑った光弦が、眩しそうに瞬きする。
「亮くんも、もう寝る?」
「や、おれは……」
仕事で読まなければいけない本があるから、自室に戻るつもりでいた。でも……。
光弦はとろんとした目で見上げてくる。仕事への意欲が、急激に失われていく。
「……おれも寝る」
「ん」
布団に潜り込むと、背に腕をまわされ引き寄せられた。
「おやすみ、あきらくん」
亮の額に唇をつけて、光弦が舌足らずに囁く。
「おやすみ」
光弦の腰に手をまわす。目の前の細い鎖骨にキスすると、光弦は吐息だけでくすぐったそうに笑った。その吐息は、すぐに規則的で深い寝息に変わる。
温もりに包まれながら、やがて、溶けるような眠りが訪れた。
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