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拾う神
「……あの、本当にすみません……服を汚したがだけじゃなく、その」
「……」
紫煙をくゆらせる俺の目の前で、ショウは正座をして縮こまっている。
灰を落としながら、俺は可哀想なくらい恐縮しているこいつをどうしてくれようか思案していた。
すっかり冷め切ったコーヒーを一口飲んで、苦さに顔をしかめながら口を開く。
「俺もいいぞと言ったから、行為についてはまあ、怒ってない」
ベルトで拘束され、年下に体を好き放題されたというのは、まあ、最低な経験というわけではなかった。
ぱあっと瞳を輝かせながら、ショウが「え」と驚いたような声を上げる。
「じゃあ、俺と付き合って……」
「調子に乗るな」
「あ、ああ。そう、ですよね」
しょんぼりとした表情を浮かべて、顔を伏せたままのショウをそのままにして俺は立ち上がった。
そのまま洗面台においたままのアクセサリーを身に付けている俺の様子を、あいつは少し遠くから眉を八の字にしながら見守っているだけだ。
ここで一押しすりゃあいいのに。まあ、大目に見てやるか。
「明日の午後三時、占いの予約を開けておくから、来たいなら来い」
それだけ言って俺は玄関の扉を開いた。
勢い良い「はい」という返事を背中に聞きながら、俺はショウの部屋を後にする。
ああ、目覚めたくない趣味が開花しちまったみたいだ。
昨晩のショウの様子を思い出すと、背筋がゾクゾクとして思わず口角が持ち上がる。
服が擦れて、昨日噛まれた場所が痛い。しばらくは新しい墨もピアスも入れなくてよさそうだなんて考えながら、俺はスマホをタップする。
『拾う神が見つかってよかったな』
それだけショウに送って、捕まえたタクシーに乗り込んだ俺はそのまま目を閉じた。
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