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店内はモダンな雰囲気を醸し出し、高そうな機材が処狭しと並ぶ。
幾連にも並ぶ鏡台の前には、数人の客が施術中の御様子。
マダム達が雑誌を見る振りをしながらも、鏡越しに私達を盗み見ている気がした。
奥へ奥へ、体は前のめりになりながら、歩幅を合わせようとはしない横暴鬼将軍様は、ぐんぐん我が物顔で突き進む。
店内の最奥には、“VIP”ルーム。金色のプレートに描かれたその文字を視界に捕らえたが、すぐさま開かれて外界と遮断された。
「――――あら~大河ちゃん。貴方十分遅刻よ?」
こじんまりとした空間に、一つの鏡台。そして、何処かで聞き覚えのある男の裏声。
「悪い、ケンシロウ。」
「ちょっと、私の事はマリアって呼んで!!」
........?......!?...........。
奴の背中に隠れる様に縮こまっていた私は、ひょっこりとその声の主の面を拝見しようと、顔を出した。
一度会ったら絶対忘れはしないであろう。ドぎつい厚化粧。本日はラフなシャツスタイルだ。顔以外は男性そのもの....。顔面は生えかけた髭が気持ち悪いオカマ野郎。
『....私は、マリア。聖母マリア様よ。』
そんな自己紹介を思い出す。
渡里は、マリアの事をケンシロウと呼んだ。
ん....?もしや、『北○の拳』!?....いや、違う。アレはヒロインの名前がちょいとばかし違うじゃないか....。
なら、何故マリア?ケンシロウなのに、マリア?
「――――悪い、こいつの事頼むわ。」
「....あらやだ!!原石ちゃんじゃないの!!」
私が、脳内で百烈拳を唱えながら妄想に耽っていると、目の前の男性陣が事を運んでいた。
そして、ちょっとだけ久し振りな二度目ましてのマリア様は、私の存在に気付くと、本物のオカマの如し、両肘を曲げて軽く握り拳を作りながら突進してきた。
訂正、こいつ正真正銘のオカマだったわ。
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