04.

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 どうしたも何も、この行動で羞恥心に駆られる。  カーッと熱くなった頬。どうやら真剣な眼差しは、不意打ちで心臓を締め付けた。 「....なんでもない!!」 「なんなんだよお前。」  どうもこうも、言いたい事を言えるタイミングって難しい。  この場所で、絶対に場違いな私。無理矢理着飾られて連れて来られたけれど、周りを見渡せば、綺麗なお姉さん方に圧倒される。  ちょっと視線をずらして、さっきの銀髪の方を見れば、隣のお姉さんの御胸を鷲掴みにしているし、なんなら....背後からお姉さんが銀髪に抱き着いたら、頭を上げて濃厚なキスが繰り広げられている。  それが当たり前みたいに、次から次に....レオって男は、見境無くお姉様軍団を次から次へと相手をしていて、こんな場面を背景にしていると、未だにピンボケしつつも目の前に在る渡里の顔面。 「大河くん、一番高いの持ってきていいっすか?」 「嗚呼、構わねーよ。どうせ会計は、レオ持ちだしな。」 「それじゃ、持ってくるんで待っててくださいね。」  跪いていた豪くんが、一瞬だけ片目を閉じた。これはウィンクとやらでしょうか....。  オーダーを受け終えたワンコが、軽快な足取りでその場を去る姿に、安堵の息が漏れ出る。  真顔で見つめられるよりも、表情だけ繕った皺くちゃな顔の方が、何か裏が在る気がしてならない。  喉は乾いたけれど、今お酒を飲んだら確実に、死ぬ気がするのだが....。  背後で閉まった扉、だけどそれは直ぐに再び開く。まさか、こんな直ぐに戻って来るか?と、顔を顰めて来ない事を祈り始めていれば、正面に座っていたお姉さん等が、一斉に黄色い声を放った。 「遅れてごめん。」 「ちーちゃん遅いよ~。てか、君たち五月蠅い。ちょっと黙っててくれる?」  明らかに豪くんのモノでは無い少し掠れた感じの高めの声。レオがお姉さん達を黙らす時の表情は、観れなかったが、それは途轍もなく冷たかった。  言い終えた後に、私がレオの顔を見た際には、綺麗な彫刻顔がふわりとだらしなく、表情を崩して私の背後に居るちーちゃんとやらへと向ける。  そんな彼の登場に、隣の渡里が大袈裟に脚を組み始めると、そのまま肩を勢いよく抱き寄せられた。  肩同士がぶつかって密になれば、渡里は....。 「―――んん!?」  気が付けば、もう既に唇を奪われていた。それは一瞬の出来事。事故では無い故意。   「ヒュ~。トラちゃん熱いね~。」    口笛の後に、レオの声が聴こえてきた。  
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