04.

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 シャンパングラスを片手に、酔った素振りをする肌の白い女。  一見、痩せ細っていそうで、体のラインはとても美しく、抱き心地の良さそうな女。  様々な良い女、悪い女を抱いてきたからこそ一瞬で察する。  どこかの令嬢なのだろうか....それにしては綺麗な顔で、正直その辺に野放しにしておく方が勿体無い。仮に芸能人ならば、あれ程の上玉を俺が見逃す筈がないしな....。  ふらふらとした覚束ない足取りで、その場でバランスを取って、一人で立つその子へと向かう途中、大御所の女優に捕まれば、思わず舌打ちが出た。  勿論、それが大先輩の耳に届くことは無く、直ぐに繕った営業スマイルで、会話を共にする。 「―――――あら、山代さんじゃない。.....今シーズンのドラマ中々良いわね。」 「有難う御座います.....ところで、あちらの女性は、どこかの女優さんですか?」 「....さあ。見たこと無いわね。」  知らないなら、貴女に価値は無い。ただ目の前に居る女に照準を構えていた。  少しでも情報が得られなければ、その時は自らで射付けるのみ。  その女の周りには、少しだけ距離を置いて様子を窺う外野共がうろつくが、そんなの知ったこっちゃない。  俺に落ちない女は居ない。この勝負俺の完全なる勝利だ。そう確信した。    大御所が何かを喋り掛けていたが....。  目の前で倒れそうになったその子へと一直線に駆け寄れば、持っていたグラスから溢れたシャンパンが、俺のスーツに掛かり中まで染みわたる。 「大丈夫ですか!?」 「.....。」  彼女の体を支えながら、声を掛けても返答は無い。  俺はその子の身を心配しつつも、身の内では勝ち誇った様に笑っていただろう。  救護の名目で会場から連れ去れば、今宵の餌の為に用意していた部屋へと連れ込んだ。 「――――――ねえ、君はダレ?」  目が覚めた君の正体を知りたかった。そして、目の前で無防備な姿を晒す獲物に欲望を抑える事は叶わず。  本当は順序を踏んでやりたかったけれど、君がいけないんだ。と自分の都合の良い解釈で、その美しい唇を奪った。  
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