悩める第一王子殿下は、一刻もはやく弟に太子を譲りたい

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 学園は人材育成機関(アカデミー)とも呼ばれている。コースは官吏科、騎士科、魔法士科、執事・侍女科の計四つ。初等部は十二歳から。高等部は十五歳から十七、八歳まで。  春のダンスパーティーは両方の卒業式に付随する特別なイベントとあって、皆、気合いが入っている。  参加できるのは卒業生と両生徒会役員。加えて純正なる抽選制で招待状が送られた数十名のみ。ホールの収容人数ぎりぎりの約三百名に絞られる。  この日は卒業生を祝うという名目のため、どの生徒も制服ではなく夜会服。色とりどりのドレスと紳士服の裾が音楽に合わせてくるくると踊り、ホール中央を彩っていた。  なお、初等部の生徒――第二王子ユーリも――が、いることを(かんが)み、配られる飲み物にアルコールは一切入っていない。  いわば実際の夜会を模した健全なる『夜会の真似事』は、どこか芝居じみてもいて、なおかつここは一段高く(しつら)えられた王族専用席。  場もあたたまった頃合いで突如立ち上がった弟の一挙手一投足に、自分を含めた面々は釘付けになっている。  ノエルは、シャンデリアの光を受けて蜜色に輝く髪に縁取られた、気の強そうなまなざしと幼さの残る端正な顔を見入った。  ユーリは、ぷるぷると震えながらいっそう激高した。
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