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このように病院のベッドに寝かされているということは、あのあと機体に支障が生じ、意識朦朧としながらもどこかへ不時着したのだろう。
確かあのすぐ近くには、陸軍の広大な練兵場があった。おそらく、不時着するならそこだ。
するとここは、そのすぐ横にある専学の付属病院か。
そうだ、私と共に飛行していた清水一等飛行兵はどうなったのだろう。
まさか死んだのでは。
もし死なせてしまったのだとすれば、これは教官として大失態だ。
すぐに清水一飛の安否を確認しなければ。
「誰か! 誰か居ませんか!」
焦燥感に駆られる。
体を起こすと、両膝に激痛が走った。
思わず息を飲み身動きを留めると、私はそれからゆっくりとベッドに胡坐をかいた。
部屋を見回す。
何だ、この違和感は。
顔が映るほどに、つるんとした床。
壁の格子から聞こえる、強弱のない風音。
眼球だけを動かして周囲を窺ったあと、しばし放心する。
甚だ静寂なり。
すると突然、その静寂を破って不意に扉が叩かれた。
トントン……。
「入りますよー」
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