21人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、おもむろにそれを口へと運ぶと、洋机の対面に座した結衣さんが両手で頬杖をついて、じっと私の顔を眺めていることに気が付いた。
「あの……、なんでしょう」
「悠くん、コーヒー好き?」
「え? そうですね」
「そう」
結衣さんは少し目を伏せて、私が卓上に戻したカップを一瞥したあと、それからまたすぐに元の笑顔に戻った。
「ねぇ、悠くん。今日ちょっと外に出てみない?」
午後になって、私は結衣さんに連れられて家を出た。
結衣さんは、洗って縮んだような半端な長さのテント地の青いズボンと、袖をちぎったような肩が出た白いブラウスという出立ち。左肩から右腰にかけて、斜めに小さめの茶色の鞄を掛けている。
「悠くん、バス、分かる? そのシートに座るの」
「は、はい」
坂を下り切ったところにあるアスファルト敷の広場で、結衣さんとバスに乗った。
どうやらあそこは、バスの転回場を兼ねた停留所だったようだ。
姿を現したバスは、なんとも不格好。
最初のコメントを投稿しよう!