[1-3] 真実の在り処

10/18
前へ
/308ページ
次へ
 鼻先が無く、墓石を寝かせたような真四角の大型自動車で、発動機は前ではなく後ろに載せてあるらしい。油で動いているのか、薪や石炭を燃やしている様子はない。 『発車します』  マイクロフォンを握って運転しているのか、運転士の声が拡声器から聞こえた。車掌は居ないようだ。 「結衣さん、車掌が居ないが、運賃はどうやって支払うのですか?」 「え? あたしはICカードで払うけど、持ってない人は現金で払うよ? あそこ、料金箱があるでしょ?」  料金箱?  賽銭箱のように、小銭を投げ入れるようになっているのだろうか。アイシーなんとかで払うという意味もよく分からない。  見渡すと、車内の前方に光る文字が表示された掲示板が見える。 「すみません、結衣さん。あの、前に示されている一九〇というのは……」 「あれ? 運賃が一九〇円ってこと」 「一九〇円っ?」  思わず声が出た。  運転士が、後写鏡を通してチラリとこちらへ目をやる。  隣の結衣さんは、少々眉根を寄せて私の顔を覗き見上げている。 「いや、すみません。あまりに高額でしたから」 「高額?」
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加