[プロローグ] 見知らぬ顔

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[プロローグ] 見知らぬ顔

 どれくらいの時間が経ったのだろう。  気が付くと、そこには見知らぬ天井があった。  のっぺりとした、なんとも軽薄なその白い天井の数か所に、見たこともない細長い電球が光っている。  美しい。  まるで観音さまの後光のような、美しく神々しい白光だ。  じわりと目が慣れて、次第に周囲の像がはっきりと結ばれ始めると、私は己が至極清潔なシーツの上に(あん)()していることを理解した。  ふと、小鳥が啼くようなピッピッという音に気が付いて目を向ける。するとベッド横の脚の上に、不思議な光る文字が浮かび上がるなんとも奇妙な(はこ)が据えられていた。  ここはどこだろう。  腕には腹巻のようなものが巻き付けられ、不思議な函から延びた細い管がそれに繋がっている。  体があちこち痛い。  かすかだが、陸軍の浄水錠を溶かした水のような匂いが鼻の奥に届いた。  もしや、ここは病院だろうか。  記憶を辿れば、私の(れい)(せん)が謎の光に飲み込まれたのまでは思い出せる。
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