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おっとり娘
おっとり娘
数日後、春日教授は約束通りえみを連れてきてくれた。
薄化粧をしているものの、相変わらずあどけない彼女に苦笑してしまう。
えみの衣装は、昨日とは違う。
俺自身は、黒のTシャツに、Gパンだった。
えみの格好は、初々しい乙女らしい姿。
深すぎず広すぎず前後に開いたVネックの白シャツに、柔らかいピンクのフレアスカート。
ベージュのミュールとスカートの丈も膝丈で、動きやすそうに見える。
えみにとても似合う清楚で可愛らしいスタイルで、俺は好感が持てた。
俺は、少し緊張気味ではあったが のんびりとした笑顔に心安らぐの覚えている。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる姿に、なんだか微笑ましく思えた。
友人が企画したカップルツアーだった。
俺自身外資系の仕事をしていることもあり、日本人より外国人が多い。
上質な面々ばかりで、問題はない。
えみの手を引いて、バスへ乗り込み、のんびりと出発した。
「誰かと思ったら、祥じゃないか」
一人の男が、流暢な日本語で話しかけてくる。
よく通っているアメリカのスポーツジム仲間であり、古くからの友人のレスキーだった。
俺と同じくらい百九十センチはある長身で、金髪碧眼で、端正な顔立ちをしていて体格はよく俺腕よりも野太く倍はある。
見かけは怖そうに見えるが、人懐っこく俺と違ってよく笑う。
日本好きで、他の仲間もいたが彼とは何度か一緒に旅行したこともあった。
「偶然だな。オリビアは?」
「今回俺は、友人に頼まれてイヴェントの手伝いをしているんだ」
「そうか」
「へえ。毛色の違う可愛いキティちゃん連れているね。趣味変えた?」
「人ぎき悪いこと言うなよ。彼女は俺のお見合い相手、婚約者候補だよ。他とは違う」
俺の言葉に、えみは驚いて目を見開いている。
「そろそろ落ち着くつもりなわけ? しかしこの子、若すぎない?」
レスキーは、好奇心たっぷりな瞳でえみを見ている。
「十八歳だし、もう大学生だよ」
「大学生って……。自分で育てるつもり? それはそれで楽しそうだけど。名前は?」
「えみ。レスキー、邪魔するなよ」
面白げに笑うレスキーの言葉に、俺は威嚇する。
「わかったよ。男慣れしてないっぽいし、泣かすなよ」
レスキーは、俺の機嫌を察知したのか、そう言って去って行く。
えみは、レスキーが去って行ったあと、すぐさま窓辺へ視線を向ける。
さっきのこと、えみはどう感じたのだろうか?
気にはなっていたが、今は時期早々できくのはやめておいた。
「景色、綺麗だな」
俺は、窓枠へと手を差し伸べて、後ろから抱くようにえみに近づいてみた。
「……そうですね。久しぶりにのんびりと景色眺めるのもいいかも」
「そうだね」
一瞬躊躇いがあったので、何も言わないかと思ったのに。
にっこりと、えみに余裕の笑顔を向けられてしまう。
こっちのほうがどきりとしてしまった。
今にも折れそうな細い肩に、優しい花のようなコロン。
成熟しきってないが、妙に丸みを帯びた大人びたラインも見え隠れしている。
俺の胸の鼓動は、高鳴るばかり。
初めて会った時から変わらないおっとりとした雰囲気に柔らかな物腰、仕草や笑顔が可愛らしく癒されてしまうのもある。
俺は、もしかすると日々の現実に疲れているのかもしれない。
華やかで気高い女性よりずっと好みかもと、俺は内心そんなことを考えていたーー。
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