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「アンタ今、ドキドキしているだろ?」
いきなり耳もとで彼の声がした。周りのノイズをかき消すように入ってくる。
事実だ。現在進行形で、わたしの心臓は早鐘を打っている。それはもう、ドッ、ドッ、ドッ、と激しく。あまりの鼓動に痛みを覚えるぐらい。
そんなわたしの気も知らず、楽しげな調子で彼はつづける。
「俺も同じだからさ。ずっとドキドキしっ放し」
無言で、わたしは首を縦に振る。
緊張のあまり声がでない。
フッ。彼のこぼした笑みが鼓膜をくすぐる。
「そんなに震えなくてもいい。怖くないさ」
彼の腕にグッと力がこもった。わたしの体が、彼のほうへ寄せられる。彼の体温が、わたしを包みこむ。息がとまるような勢い。首を絞めつけられるような感覚……。
鋭い双眸がわたしを射抜く。ドキリッ、と心臓が跳びあがる。
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