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材料の小麦粉(薄力粉か強力粉?)を準備して、塩をまぶしておく……と書いてあるが、どのタイミングなのかがよく分からない。麺生地を作り終えた後にふるえばいいのだろうか? まずは、卵1個と牛乳50cc程度を合わせて混ぜておくのか……。
麺棒を使って、薄く延ばすんだなぁ。
麺を伸ばしたらボウルに入れ、そこに卵黄を加えながらさらに混ぜる。
そして先程用意した薄い生皮に包み込むようにして折りたたんでいく……。
おおー、なんかそれっぽい形になっていくぞ。この作業はちょっと楽しい。
……ん?でもこの工程には何か意味があるんだろうか。
さっきも思った通り、「食べれば同じだし!」という感じなんだけど。
とりあえず指示通りに作業を終わらせていくしかない。
そして再びボウルの中へ。ここから20分ぐらい置いておくらしいのだが、そんなに長いこと放置していて大丈夫なんだろうか……?いや待て、今さらどうしようもない。あと15分ほど残っているわけだから、その間に他の作業を進めよう。
"生地が完成したところで麺種を作る……と言っても何を選べばいいかよくわからないので、『無難なところ』を選んでおけばいいんじゃないかと思う。
ということで、小麦粉200g、水150mlに加えて、卵を2つ追加する。
ここに来る途中スーパーによって買ってきた、天ぷら粉の袋も一緒に入れる"
……おい、ちょっと待ってくれよ!
これ天ぷらじゃなくてパスタだろ!!
どうして小麦粉から始める段階でここまで間違いを犯せるんだ?
もはや才能のレベルじゃないのか……!?
しかしそんなことにツッコミを入れている場合ではない。
そう、俺は今、命懸けでパスタを打っているのだ……!
天カスの材料を入れて、混ぜ合わせ……る?
これはもう混ぜ終わった状態でいいんだよな。次にフライパンにオリーブオイル大さじ3〜4杯入れて中火にかける。
よし、ここで強火に変えちゃダメってことはちゃんと覚えてるぞ。
……で、いよいよスパゲッティを入れるんだな。
よしきた、ここは俺に任せて
……あっ!
ああっ!しまった!!!
つい焦ってしまって、麺ではなく大量の具の方を入れてしまったじゃないか……!
ど、どうすれば……?
あ、いや、落ち着いて深呼吸をしてみればいい。
ひっ、ひぃふぅ…………うん。だいぶマシになってきた気がする……。
って違う!落ち着くんじゃない、冷静になれ俺!!
もう一度手順を確認してから調理を再開するべきだ!
……で。結局、麺をゆでる前にソースの味見をする羽目になってしまったわけだが、何度やっても失敗することはなかった……。
まあそれは当然のことだろう。なぜなら俺は、パスタ料理に関して言えば『名人レベルの腕前』を持っているのだから。
「えっ……?あの子……パスタを茹で始めたんですか……?」
……あれっ、何か聞こえた気もするがきっと空耳だろう。今は集中しなくてはいけない時だ。
何なんだ。「お母さん」の声が聞こえる。知らない人だ。面会者は衛生上厨房に入れないはずだ。
「てんぷら子、てんぷら子、どうしたんだ?どこか身体でも具合が悪いのかい?お前はてんぷら子であってパスタを茹でる小麦子じゃないだよ?お父さんに何でも相談しなさい」
「てんぷら子や。お隣の小麦子さんがパスタ茹での名人だからと言って競争しなくてもいいのよ。お母さんはね、お前が揚げる天婦羅があればそれで満足なんだよ」
今度は男の声だ。
「てんぷら子や、かあさんの言うとおりだ。となりの小麦子さんがパスタ茹で上手だからなんだというんだ。よそはよそ、うちはうちじゃないか。うちは徳川家康公からてんぷら名人の家督をいただいた由緒ある家庭なんだ。もっと自信をもちなさい。ほら、涙を拭いて。父さんはな、お前が母さんのおなかに宿った日においしいてんぷらを食べたんだ。それでな、お腹の子が女の子だと分かって、立派なてんぷら子に育つよう、てんぷら滝でてんぷら粉を頭からかぶって願掛けしたんだ!だから、お前は絶対立派なてんぷら子になる。とーさんを信じなさい」
「お父さんったらね…俺はてんぷら子を日本一にするためならたとえてんぷら粉の滝の中―ってはりきちゃって。父さんったら、あはは」
「本当にてんぷら滝に飛び込んだんだ、その時は目の前が真っ白になってね。」
うおおぉ……!なんだこれ、どういう状況……?
なんか幻覚でも見ているみたいで頭がくらくらしてきた。
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